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反物 くる くる 9  湯のし?湯通し?どっちやねんっ!?

2012年11月23日

 


   反物 くるくる でっちくん。  今日は先輩くんにおつかいを頼まれました。 外はぽかぽか良い天気。

   おこられてばかりの店をはなれて 羽根を伸ばしたゴキゲンのでっちくん。  すっかりちんたら行楽気分です。

   ぶらぶら寄り道しながら やっと古ぼけた一軒のお店の前に着きました。「しみぬき しっかい」と小さな看板。

   がらがらと格子戸をあけると ぷ~んと古い畳の饐(す)えた匂い。「こんにちは~」 ・・・ 誰も答えません。

   「こんにちはー!」 ・・・ やはり応答なし。 「こんにちはー!だれもいないんですかぁ~?」 と でっちくん。 

   すると、がたがたと奥の障子が開いて よぼよぼの上半身ランニングシャツのおじいさんが 茶碗と箸片手に

   のそのそと顔を出しました。「 ほええぇ・・・ 」 「 あ、あの~ 」「 はぁはわゎゎ・・・ 」「 お、お仕事を・・・ 」

   「 わしゃ~耳が遠いんでなぁ~ ほえぇ・・・ 」 ゾンビのように這い出てきた老人に思わずのけぞるでっちくん。

   「 これ、お願いしますっ!」 気おされたでっちくん、玄関口に反物2反置いて あわてて立ち去ろうとすると ・・・

          「 小僧はんっ 待ちなはれ・・・ 」  「 は、はい~っ!! 」

 よぼよぼシッカイ屋爺さんのうって変わった野太い声に でっちくんのチキンハートはどっきんどっきん破裂寸前です。

  反物、両の手につかんでジロリひとにらみ。  「 湯のし、湯通し どっちやねんっ? 」

  しまった~ でっちくん さっき寄り道して角のパン屋でジュースを飲んだときに うっかり伝票を失くしたようです!

  「 あ、あのぅ そのぅ ・・・ 」 しどろもどろのでっちくん。「 はぁ~? わしゃ~ 耳が遠いんやゆうとるやろ~? 」

  窮したでっちくん 逆ギレヤケッパチ。「 もぉ~ 湯のしだって湯通しだって どっちだっていいじゃないですか?」

            「 どっちでも ええことないでっ! 」  「 ひえぇぇ~ 」

            右手の小紋 左の紬を掲げて シッカイ屋爺さんは噛んで含めるように言いました。

    「 染めもんは湯のし 織りもんは湯通し よう覚えときなはれや ・・・ 」

 そうなんです。後染めの縮緬や綸子または総絞りは 蒸気で皺を伸ばし幅を出して光沢発色をよくする『湯のし』、

 先染めの紬は機(はた)に乗せるとき糸をかりかりに固めた糊を落とすため お湯につけてよく洗って乾かします

 これが『湯通し』。天気が悪いと湯通しは時間がかかります。湯のし湯通しは工程が異なる似て非なるものなんです。

 腰を抜かしたでっちくんを尻目に よぼよぼシッカイ屋爺さんはのそのそと障子の向こうに消えてゆきました ・・・

 「 ほえぇ・・・ ほなまいど・・・ 」 でっちくんが湯のし湯通しを間違えることは二度とないでしょう。

   反物 くる くる でっちくん  呉服の道は まだまだ 奥深いですよぉ~

     

Posted by ふくひろ 若旦那 at 14:30Comments(2)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 8  でっちくん 美術館 に行く の巻

2012年08月18日

 
   反物 くる くる でっちくん   今日は大番頭さんに連れられて 郊外の美術館へ やってきました。

   ちょっとした社外研修といったところです。いつもの雑用から開放されて でっちくん 心晴れ晴れ日本晴れです。

   館内には 数多くの彩り鮮やかな絵画が陳列展示されています。およそこういう世界とは無縁だった でっちくん、

   わかったようなふりをして 絵の前でわざとらしい嘆息 ちょっと気取って ひとり うなずいてますよぉ?大丈夫?

   そのとき  ぽかりっ あいたたた 。。。頭をさすって振り向くでっちくん。大番頭さんのゲンコツです。

                      「 お前 何しとんねん ? 」

          「 なっ 何って 芸術鑑賞に決まってるじゃないですかぁ? 」

          「 おまはんごときが ゲージツ なんざ 十年早いわっ !! 」

 大番頭さんのしゃがれたドラ声に感電ビリビリ~ でっちくんのチキンハートは どっきん どっきん 破裂寸前です。

     「 展覧会なんてもん、わしら呉服屋は 駆け足で見るもんや、 ちんたらしとったらあかんど? 」

 大番頭さんは でっちくんの首をぐいいと掻き抱くと しゃがれたドラ声で でっちくんの耳元にささやきました。 

 「 ええか? 一番大事なんは“ 色 ”やっ! 色の感覚を磨くんや、 色を 眼ぇに焼き付けて憶えていくんや。。。

  “ 色 ” はなかなか 記憶(おぼ)えられんからのぅ・・・  今日はその特訓にココへ連れて来たんやど・・・? 」

 「 ひえええ~ 」 眼を白黒させる でっちくん。  でっちくん 大番頭さんには “ 絶対服従 ” なのです。

 「わかったら とっとと 行って来いっ!」 あたふたとよろめく でっちくんの背中に大番頭さんのドラ声が響きます。

 「 さいごに一番好きな絵を見つけてこい、ええかぁ?一枚だけやどぉ? 」

                       破顔一笑、 ニッコリと笑う 大番頭さん ・・・ 

  「 その絵が好きやぁ~ゆう気持ち忘れんなよ。それが一番大事なんや・・・ 」

  
  “色” はなかなか記憶できません。憶えていると思っていても記憶と実際の色が違ってた!なんてことはしばしば。

  即断即決ワンアイラブ(ひとめ惚れ)・・・瞬間で即応して良い色を選んでゆくというのも非常に難しいものなのです。

  大番頭さんと でっちくんの珍妙な特訓が のちのち呉服の仕事に役に立ったかどうかは さだかではありません。

  ただ でっちくんが まだまだゆっくり絵を鑑賞する余裕など ないことだけは確かみたいですねぇ・・・ (^ー^;)

     反物 くる くる でっちくん  呉服の道は まだまだ険しいですよぉ~  

Posted by ふくひろ 若旦那 at 19:02Comments(0)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 7 ~ 袋帯が入らないっっっ !? ~

2011年11月17日

  
  
  反物 くる くる でっちくん。 本日は お店の展示会。たくさんのお客さまがいらして たくさんのおキモノを見ています。

  商売に関しては いまだ心もとない でっちくん。せんぱいくんたちの合間をぬって 後片付けに てんてこまい です。

  それでも以前のように まだ商売の終わってない反物まで くるくる巻いてしまうようなことはさすがになくなりましたが~。

                   ( 「 反物 くる くる 2 ~ 丁稚でっちのおしごと ~ 」 2010・10・19 参照 )

  でっちくん、人知れず 地味ィ~に 成長してますねえ~  (^~^;)

  袋帯を見ていたお客さまが引けて 会場に袋帯が散乱してます。  でっちくん、 お仕事ですよぉ~!!

  すかさず トテテ・・・と駆け寄るでっちくん、 袋帯をセロハンビニールに収用しようとしました ・・・ が ・・・ !

                  あれ     あれ ?     あれれ  ???

 




                  ふ、 袋帯が ビニールにひっかかって ・・・

 




                      ぐしゃ ぐしゃ ですう ~ !!

 四苦八苦している でっちくん。 そこへ 初登場、 横で見ていた 年輩の 《大番頭さん》  ギロリと ひとにらみっ!

 「 お前ら ええ学校 出とって そんなコトも わからんのかい ~ !? 」 

 大番頭さんのしゃがれたドラ声に 感電ビリビリ~  でっちくんの チキンハートは どっきん どっきん 破裂寸前です。

                「 ええい、 貸してみい~ !! 」

 大番頭さんは 直立不動のでっちくんから 袋帯とビニールをひったくると もういちど ぎろりっ!

 「 ええかあ? ビニール袋に帯の方を ムリヤリ 突っ込もうとするさかい  

    ひっかかるねん!   帯が いやや いやや  ゆうとるやろ !? 」

    「 はいぃぃ~ ・・・ いやや いやや ゆうてますぅ~ 」  でっちくん、大番頭さんには “絶対服従” です。

    「 ほれっ、 帯を動かさんと ビニールの方を す~っと引っぱるんや 」

  




                            おっ? おおおっ ・・・?

 




                          きっ キレイに はいったぁ~ ・・・!

 確かに帯をビニールのなかに入れようと意識すると 唐織 や 厚手の錦織 は もしゃもしゃと 引っかかってしまいます。

 しかし 帯を動かさず ビニールの方を す~っと 手前に引くと するりん するりん 面白いように入っていくんです。

     「 これが 発想の転換っちゅうヤツやっ!! おもろいやろっ? 」

 破顔一笑、ニッコリ笑う 大番頭さん。大番頭さんの大カミナリのあとのニッコリに でっちくんは いつも救われます。

 そして 大番頭さんの 子どもみたいな 満面の笑顔が  なぜか でっちくんは だいすきなのでした ・・・。

            反物 くる くる でっちくん     呉服の道は まだ まだ 遠~いですよぉ~ 

    

Posted by ふくひろ 若旦那 at 18:08Comments(4)反物くるくる でっちくん

 でっちくん解説篇 なまむぎ・なまごめ・なまつむぎの秘密 

2011年06月05日

    
       いつも 『 反物 くる くる でっちくん 』 読んでもらって ありがとうございます。  m(^-^)m

       本来なら 『 夏ゆかた★百花涼乱! 後篇 』 を お届けするはずなのですが~ ・・・ 

       なぜか 『 でっちくん 』  が 先に なっちゃいました~。     ξ(^~^:) 

       ・・・ というのも まだまだ 到着してない 秘蔵の 極上ユカタも  ありまして、 あせらず

        じっくりと 楽しんで ご紹介していきたいなァと・・・。     夏は まだ長いですからぁ~

       
       さて、 今回の 『 反物 くる くる 6  なまむぎ・なまごめ・なまつむぎ 』 ですが 

       ちょっと わかりにくいのではないかと ・・・   とくに 「 なまつむぎ 」 の部分が・・・。

    
               ということで  はじめての 『 でっちくん 解説篇 』 です。


 







  



                            盛夏の名古屋帯 二本 並べてみました。

    左が 「麻 あさ」 の名古屋帯                    右が 「生紬 なまつむぎ」の名古屋帯 ・・・

 
 どうです? 似てますか? 生紬は 柿渋などで染めたものもありますが 生成りの自然色のものは麻と 瓜二つ。

 でっちくんならずとも 見間違うかもしれませんね。  麻は  植物繊維 、 生紬(絹)は  動物繊維  です。

 ぼくらがふだん眼にする 白く美しい光沢の絹糸は 生糸(きいと) という加工前の バリバリゴワゴワした 絹糸を

 精錬(せいれん) 、つまり  脂肪タンパク膠(にかわ)質を取り除いて はじめてあのやわらかさが生まれるんですね。

 生紬(なまつむぎ) は 涼感をだすため わざと そのバリバリゴワゴワを  調節して 糸に残しているんです。

 精錬(せいれん)をもう少し詳しく説明すると 生糸から セリシン を 落とし フィブロインを残す・・・ということです。

 イメージするなら モスラっ! モスラの幼虫の鼻(いや口吻?)を思い浮かべてください。えっ 古すぎてワカラナイ?

 だったら、仔豚ちゃん、ブタの鼻を 真正面から 落書きしてみてください。    (00) ← こんなカンジ? 

 ふたつのブタの鼻の穴が 二本の繊維素 フィブロイン です。 二本並んだ 繊維素 フィブロインの周囲を

 膠(にかわ)質のセリシンが包みこんでいます。 絹糸の断面は まさに モスラの鼻 いや ブタの鼻 状態ですね。

 さっきから セリシン がいらない、いらないと 悪者扱いですが   じつは 最近 話題の シルク石けんの原料は 

 セリシン なんです。  バリバリゴワゴワの セリシンは 美肌効果 バツグン みたいですよ~    (^-^) 


   次回は いよいよ  『 夏ゆかた★百花涼乱 後篇 』  を お届けできると 思いま~す !

           乞う ご期待・・・ してくださ~い !    \(=^▽^=)/

     

  

    


 

   

Posted by ふくひろ 若旦那 at 15:03Comments(4)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 6 ~なまむぎ・なまごめ・なまつむぎ~

2011年06月05日

   反物 くる くる でっちくん  梅雨入りをひかえ 店頭にも 夏の帯や着物が並びはじめました。   

   でっちくん 呉服店の雰囲気にも少しずつ慣れ お客さまの応対も なかなかサマになってきました。   

       ・・・・・。        とりあえず  み、 みかけは・・・ですねえ・・・  (^~^;)A

   あっ お客さまです。  「 いらっしゃいませ・・・。」  おおっ でっちくん 堂々としています・・・!

   よくぞ この短期間に これだけの風格と気品を・・・。 口元には ちいさな笑みさえ たたえています・・。 

   お客さまは 盛夏のなごやおびを お探しのようです。生成りの名古屋帯を差して でっちくんにたずねました。

      「 これは、麻(あさ) ですか? 」      「 はいっ そうです。 」

   素晴らしいっっ   即答 ですっ!  お客さまは となりの やはり生成りの名古屋帯を手にしました。

      「 これも、麻(あさ) ですか? 」       「 はいっ そうです。 」

      血相をかえて 店の奥から せんぱいくん が あわてて 駆け込んできました! 

       「  す、すみませんっ それは 麻(あさ) ではなく 絹(きぬ) です! 」

      えええ~ と   お客さまとでっちくん ふたりそろって ビックリ仰天 です。

    狼狽しながらも必死で体勢を立て直そうとする でっちくん。ブレイクポイント一歩手前、まだ挽回の余地アリ?

       「 あははは  なにいってんですか~  こ~んなバリバリの正絹が あるわけないでっしょ? 」

        でっちくんの口元にたたえた小さな笑みも もはや ヒキツッて バリバリです。

       「 いやいや これはだなあ 生紬(なまつむぎ) といって 涼感をだすために わざと 

         絹糸に ざっくりとした風合いを残して 織ってるんだ。  麻じゃなく れっきとした絹なんだ・・。」

     
    非情な せんぱいくんの裁定に ブレイクどころか もはや 木っ端微塵《コッパミジン》 の でっちくんです。     
          
     「 な~にいってんですか なまつむぎなんて きいたこと ないですよォ~  

    なんなんですかあ  なまむぎなまごめなまつむぎ ですかあ~!? 」

  
  赤面・泣きベソ・パニクッて ついに 馬脚をあらわした でっちくん。  呉服の道は まだまだ険しいですよオ~・・・  

Posted by ふくひろ 若旦那 at 13:10Comments(0)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 5 〜でっちくん はじめて店頭に立つ!〜 

2011年04月09日

   反物 くるくる でっちくん。  今日は でっちくん が 生まれてはじめて 店頭に立つ日 なのです。

   朝から キンチョーのあまり でっちくんの チキンハートは どっきんっ どっきんっ いまにも破裂しそうです。

   おみせの ショーウィンドウを お客さまが みておられます。   でっちくんは オリの中のくまの ように 
   
   あっちこっち ウロウロしていましたが  まさに 決死の覚悟を決めて  ついに お客さまに 声をかけました・・・!

   
       い っ・・・  い ら っ し ゃ い ま せ ぇぇぇ 〜・・・ !!

   眼を血走らせ 噛み付かんばかりの でっちくんの気迫にびっくりして お客さまは あわてて立ち去っていきました。

   ぽかん・・・ とひとり 取り残される でっちくん。    そりゃあ お客さま  ビックリ しますよねぇ〜・・・。

  あっ 次の お客さまです。  でっちくん こんどは ソフトに そして やや 親しげに 話しかけました・・・。

     いやあ〜・・・  今日は いい 天気 ですねえ ・・・ 

  はァ・・ と 白い眼で お客さまは 向こうへ 行ってしまいました。またも ぽかんと ひとり取り残されるでっちくん。

  ムリも ありません。  だって 空は シトシト 雨模様 なんですから・・・。 でっちくん 余裕なさすぎ です〜。

  三人目のお客さまがウィンドウを見てます。でっちくん 意気込んでいくと お客さまの方から 訊(たず)ねてきました。

  「 このキモノは 何歳ぐらいまで 着れるのかしら? 」    「 っっっ ・・・ ??? 」

  みるみる カオが 真っ赤になる でっちくん。   あわてて 店の奥へ 逃げ込んでしまいました。 

  こんどは お客さまが ぽかんと ひとり取り残される始末・・・。 新米・ペーペーのでっちくんに答えようがありません。

  だって でっちくん  まだまだ キモノのキの字もわかってないんですから〜。 うーん、 困ったもんですねぇ〜。

  こんなとき たよりになるのが やはり せんぱいくん です。 でっちくん 半ベソカキカキ せんぱいくんに訴えました。

  「  お客さんとぉ〜  まともにハナシもできないしぃ〜    キモノのことも  さーっぱり  わかんないしぃ〜

    一体 どーしたら いーんですかあ・・・!? 」  でっちくん くってかかって 涙・鼻汁 スゴイ剣幕です・・・。

   相談に押しかけられて その上 逆ギレされてたら たまったもんじゃないですが まあまあとなだめるせんぱいくん。

   「 オレやお前みたいな若いのが とってつけたような世間話 したって 誰も 聞いちゃくれんよ・・・。 」

   「 だったら 何のハナシ するんですかあ? ボクは もともと ハナシするの 大の苦手なんですよお?

    そんなに ハナシ得意だったら とっくのむかしに 落語家に弟子入りしてますよぉ〜 ! 」

   「 ・・・お客さんは キモノを 見にきてんだから やっぱ キモノの ハナシを しなきゃあ・・・。 」

   「 イイ ・・・  だから それは ボクには ムリだって いってんじゃないですかぁ〜 ! 」

   「 アホゥ ! いま ウィンドウ に キモノと帯 どんだけだしとるんや ?! かぞえてみい ! 」

   「 は ハイィ・・・ ひぃ ふう みぃ のぉ ・・・ ご、五点 ですぅ〜。 」

   「 ええか? この五点の商品の名称・種類・季節・産地・セールスポイントその他モロモロをノートにかきだすんや!

     そいで 今日中に 丸暗記するんや!   陳列変わるたんび なんべんも 、なんべんもやぞ ・・・! 」

   「   いいぃ・・・ なっ・・・なんべんもぉ ですかあぁぁ・・・? 」 

   「 当たり前や!  お前の 一生分の 宿題じゃ〜 ! わかったかぁ・・・! 」 「 ハイ〜・・・! 」


          まさに    門前の小僧  習(なら)わぬ  経(きょう) を 読む  ・・・・

   
    でっちくんの 一夜漬け・付け刃(つけやいば)の  心もとない知識 なれど   だんだんと お客さまと 話が 

    してもらえるようになりました。返答に窮(きゅう)して 店の奥に逃げ込むコトも 相変わらずではありますが・・・。

         それでも 幾度(いくたび)と  ウィンドウの彩(いろど)り  が移りゆくごとに 

         でっちくんのキモノの話も  少しずつ、 少しずつ  深みを増してゆくことでしょう・・・。 

                呉服屋さんは いくつになっても  勉強です。 

         でっちくんならずとも  一生分の宿題 を 楽しく やっていきたいものです。 


         反物 くる くる でっちくん  。   まだ まだ  先は 長いですよぉ~・・・。  

Posted by ふくひろ 若旦那 at 18:00Comments(2)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 4 ~おしりを向けちゃダメ・・・!~

2010年12月24日

 反物 くるくる 《丁稚でっちくん》  今日は 《せんぱいくん》のおつかいに出かける日です。

 八百屋さんに行ってニンジンとジャガイモください・・・などというおつかいではありません。

 なんと お客さまのお家にお届けものにうかがう “おつかい” なんです・・!

 うあ たいへんだあ~  だって《丁稚でっちくん》はまだひとりで お客さまのお家に行ったことがないんですよ?

 《丁稚でっちくん》のチキンハートは どっきん どっきん いまにも破裂しそうです。

 朝からなんども歯をみがいて ネクタイは五回もしめ直しました。  さあ いざ、出発です。

 手書きの地図をなんども確かめ 遅刻しないように20分まえから到着して時間を調節しました。

 玄関に立ち おそるおそる呼び鈴を鳴らすと やさしそうな奥さまがあらわれました。

       「どうぞ おあがりください。」

       「ハ・・はい、失礼します・・・。」

 玄関の三和土(たたき)にきちんと靴をそろえ 靴下に穴があいてないコトも確かめました。完璧です。

 《丁稚でっちくん》は長い廊下を渡り りっぱな日本間に通されました。

 《丁稚でっちくん》は キンチョーした面持ちで 奥さまの方を向きながら ゆっくりと

  腰をかがめ その場に正座をしました。コホンと小さく咳きばらい。みちみち なんども

  復唱したあいさつを なるべく渋いトーンで 朗々(ろうろう)と となえ始めました。

       「 いつも 大変 お世話に なっております・・・」

  奥さまは 一瞬 くすっと微笑いました。そして やさしく 《丁稚でっちくん》にささやいたのです・・・。

       「 床の間に おしりを向けちゃいけませんよ・・・ 」

  《丁稚でっちくん》のカオは 恥ずかしさのあまり みるみる 真っ赤になりました・・・。

 
      「は、ハ・・・どうも すみませ~ん・・・!」


 それから 先は しどろもどろ・・・あたふたと 納品をすませ あいさつもそこそこに
 
 どこを どう帰ったかもわからない始末です・・。

 《丁稚でっちくん》は 店に帰っても ひとり ヤキモキ悶々としていましたが しかたなく

 《せんぱいくん》に 事の次第を 打ち明けました。

 おおきなカミナリを落とされると思いきや 《せんぱいくん》は ほお・・と 感心したような

 息をひとつ つき、 《丁稚でっちくん》をまじまじとみて 噛んで含めるようにいいました・・・。

  
      「 ええこと ゆうてもらえたな・・・ お客さんに感謝せえよ・・・ 」

 
 《丁稚でっちくん》は ハトが 豆鉄砲くらったみたいに目をシロクロさせました・・・。

 いままで失敗して怒られたことは数あれど 感謝しろといわれたコトは初めてだったからです・・・。

 それから 《丁稚でっちくん》はお客さまのお家を訪問して部屋に通されたとき まず一番先に

 床の間と お仏壇を さがすようになりました。そして決して おしりを向けないように

 なったのです・・・。

 呉服屋は お客さまから たくさんのことを教わり そして育ててもらうことがとても多いのです。

 だから お客さまには本当に感謝しなくてはいけない・・・ と《せんぱいくん》は いいたかったんですね。

 反物 くる くる 《丁稚でっちくん》  まだまだたいへんなことがおこりそうですね~。

  

 
 



       

 

 

    

Posted by ふくひろ 若旦那 at 07:00Comments(0)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 3 ~気は使うな 気をまわせ~

2010年11月07日

 反物 くる くる 回りはじめた《丁稚でっちくん》、《せんぱいくん》とお客さまのやりとりも 耳に入る

 ようになりましたし、 お客さまの気にいっている反物も お話や表情から推測して 候補を何本か

 巻かずにのこすこともおぼえました。

 だいぶ商売もやりやすくなったかと思いきや 《せんぱいくん》のカオはなぜか曇りがちです。

 不器用でユウズウのきかない《丁稚でっちくん》は 今イチ フットワークが重く なにをさせても

 要領(ようりょう)がわるいのです。

 べつにヤル気がないわけでも 横着(おうちゃく)をかましているわけでもないのですが

 どうも 《せんぱいくん》に怒られまい、失敗すまい・・と思うあまり 身体ががんじがらめになってる

 ようなんです。キンチョーのあまり 《せんぱいくん》のかおいろばかり うかがってるんですね。

 思い余って 《せんぱいくん》は《丁稚でっちくん》を夕食のあと 呼びだしました。

 《丁稚でっちくん》のチキンハートは どっきん どっきん いまにも 破裂しそうです・・!

 「・・おまえ・・おれに気ィつかってるやろ・・・?」

 「・・いえ、その・・あの・・ハア・・いえ、は、ハイィ・・・」

 「 “気”は つかうもんやない・・・“気”は まわすもんや・・・。」

 「ま・・回すんですかァ?」 いつものクセで《丁稚でっちくん》は “反物くるくる”のポーズです。

 「アホゥ、気くばり せえっちゅうこっちゃっ!頭で考えるより先にカラダをうごかすんじゃっ!」

 “気をまわす”とは、気をくばる、つまり相手の身になって考え、相手が望んでいることを素早く感じて

 率先して身体をうごかすことなんですね。

 見積もりの話になれば そろばんや電卓を・・寸法の話になれば ものさしを・・お客さまにはお茶や

 座布団をそっと持ってくる・・・言いつけられる前に先に先に足をうごかして、気をまわしていくのです。

 《丁稚でっちくん》は生まれかわったようにパタパタとこまごましく動くようになりました。

 気をまわしていると、気をつかっているヒマがないんですね。いつしかキンチョーもほぐれてバタバタ

 しながらもすこし余裕もでてきました・・。

 《せんぱいくん》、さすがです。きっと自分も最初は 気がまわせず なやんだんでしょうねぇ・・・。

 ひと皮むけた《丁稚でっちくん》・・・でもタイヘンなのはまだまだこれからですよぉ?
   

Posted by ふくひろ 若旦那 at 07:00Comments(2)反物くるくる でっちくん

反物 くる くる 2  ~丁稚でっちのおしごと~

2010年10月19日

  反物 くる くる 回り始めた 新入社員《丁稚でっちくん》が つぎに 習うしごとは
  
  やっぱり 反物を くる くる 巻くしごと ・・・そう、 あとかたづけ でした。

  《せんぱいくん》が お客さま と 商売・商談・談笑 しているそばに ちょこんっと

  座り 散らかった 反物を 巻いて かたづける しごとです。《丁稚でっちくん》にとっては
 
  けっこう キンチョー しますよねぇ。

  お客さまの お相手は 《せんぱいくん》が しているので 《丁稚でっちくん》は ただ黙々と

  反物を 巻いてりゃいいようなもんですが、ところがどっこい そうは 問屋がおろさない・・・!

  一生懸命 ガンバッて すべての 反物を 巻き上げて ひといきついた《丁稚でっちくん》に

  《せんぱいくん》の カミナリが 落ちました。

  「こらっ お客さんの まだ 見てはる 反物まで かたづけたら あかんやろっ!」

  《丁稚でっちくん》は お客さまがまだ買うかどうか迷っている反物まで かたづけて
  
  しまったんですね。反物を巻くのに必死で 《せんぱいくん》とお客さまの やりとりをまるで

  みてなかったのです。たとえ あとかたづけの おてつだいでも いっしょに 商売の「場」に

  参加しなくちゃいけなかったんです。

  商売の「場」に参加した以上 心ここにあらずで「 あぁ 早く しごと 終わらんかなぁ・・」

  などと 思ってちゃダメなんです。いやいや・・まあ、人間ですから 「早く 帰って ビール

  飲みたいなぁ・・」と思ってもいいんですけど そのかわり 耳は そばだてて 商談のなりゆき

  を把握しなくてはいけないんです。そうやって お客さまとのやりとりの 流れ、 展開、 山場、

  を 体感して 商売のこつを すこしづつ おぼえていくんですね・・・。

  《せんぱいくん》が 《丁稚でっちくん》に カミナリを 落としたのは もっと 自分の商売を

  みて 覚えろ、勉強しろ、って ことだったんですね。

  さすが 《せんぱいくん》です。 それにしても まじめなんだけれども ちょっと 融通の

  きかない《丁稚でっちくん》、しんぱい ですねぇ・・どうなることやら・・・

   

  

   

     

   

  
  

  

    

Posted by ふくひろ 若旦那 at 19:05Comments(2)反物くるくる でっちくん

ものさし、ぺちんっ!

2010年10月15日

  もんだい: たろうくんは お母さんに ものさしを とってくれる?とたのみました。
  
  お母さんは ものさしを 手にとりました。ありがとうといって たろうくんが

  ものさしのはしを 受け取ろうとすると・・・  

   ぺちんっ! ・・と ものさしで 手の甲を 叩かれました・・・。

  なぜ たろうくんは お母さんに 叱られたのでしょう?

      *   *   *   *   *   *   *   

  実は ぼくら 呉服屋は  ものさしの「さしわたし」 といって
  
  ものさしを手渡しすると とても怒られるんです。

  ものさしを 直接受け渡しをすると お互いに失礼に当たる・・・
  相手に対して敵意を示す・・・という意味があるらしいのです。

  地域差もあって おもに関西方面でよくきかれる しきたり・作法みたいな
  ものですが そんなの気にしない、そんなの知らない、というひともたくさん
  います。

  ぼくは ぺちんっ! と叱られたくちなので どうしても気になって 
  ものさしを手にすると いつも ドキドキ します。

  だから 受け渡しのときは いちど ものさしを 畳の上に置いて それから
  手にするようにしてます。(メンドクサイ・・・と思うでしょ?)

  おたがい「さしわたし」を避けようとするもの同士なら 暗黙の了解のうちに
  事(コト)はスムーズに運ぶのですが、問題は 相手が 「さしわたし」を
  知らない場合です。

  ものさしをとってくれ といわれたとき 相手が 手を出しているのに
  ぼくは わざと 相手の足元に置きます。
  えっ・・・という表情・・・そして、気まずい雰囲気・・・
  ミョーな空気が 流れてしまいます・・・。

  もうひとつのパターン。
  相手が気をきかせて 笑顔で ハイ、どうぞ・・・と、 ものさしを差し出して
  くれた場合。親切に ものさしを渡そうとしてくれているのに受け取ろうと
  しない ぼく。相手の笑顔が凍りつきます。緊張に耐えかねて ぼそり・・・

    すみません・・そこに 置いてください・・・

    は・・・? はァ・・・(なんで 受け取らんの・・?とケゲンなカオ・・・)

  またもや ミョーな空気が ただよいまくります。
  
  敵意がないことを示そうとしているのに これでは 逆に 「敵」をたくさん

  作っているのでは・・・・?と思いあぐねながらも どうしようもなく

  また ギクシャクと ものさしを やりとりする毎日です・・・。


    

Posted by ふくひろ 若旦那 at 09:41Comments(0)反物くるくる でっちくん

 反物 くる くる

2010年10月11日

  呉服屋さんが よく 反物を くるくる 巻いてますよね ?

  あれって どんな原理で 巻き上がっていくのか 不思議じゃないですか?

  ぼくら 丁稚(でっち:いや新入社員?)が最初に習うのが 
  あの 『反物くるくる』 でした。

  いちど 巻いてみたことがあるひとはわかると思いますが みため以上にうまく
  いかないんです。ぼくらも会社の寮に帰って毎晩練習してたのをおぼえてます。

  それでも 1~2週間もすると突如、反物が くるくると回り始めます。
  そうなると みんな、面白くなってきて 巻いたカレンダーや茶筒,海苔の缶まで                                    くるくる くるくる 回し始めます。  

  自分で回すのを 横から ゆっくり みてみると 両手の小指と薬指だけを動かし
  てるんですね。ひじや肩の力で ゆすり上げてるんではないです。
  小指と薬指で 反物の底を 掻(か)いているとゆうか、跳(は)ね上げている。
  指で はじかれ、跳ね上がった反物は 親指の根もと に当たって 転がるように
  小指のうえに 乗る・・・その一連の動作を けっこう高速で繰り返してますね。
    
  呉服屋さんか、ふつうのひとか、の区別って
  実は この 『反物 くるくる』 かもしれないですね。

  『反物 くるくる』のヒトは 呉服屋さんの疑いあり・・・!?


  

     

Posted by ふくひろ 若旦那 at 10:00Comments(2)反物くるくる でっちくん