うしろ姿は“夢二”美人?~長羽織 復活談~

ふくひろ 若旦那

2010年10月18日 10:14

  十数年前 突如 長羽織が流行り始めました。それまでは コートの下に着る短い羽織が大部分
  だったんです。

  そういう流行の発信は おっとり刀で 極楽トンボな呉服屋より 最先端のお客様の方が速いん
  ですね。早速 長羽織を作って下さいという注文が舞い込んできました。あわてたのは呉服屋の
  方です。ぼく自身 当時 長い羽織なんて みたこともさわったこともありません。うちの父や
  母の世代も長羽織は扱ってないのです。そこで 知恵袋のおばあちゃんにききました。

  「うちが 女学校のころ まだ 着よったひとが おったごとあるね。」

  それはいったい西暦なん年やっ!?  それに 仕立てもただ単に長くすればいいってもんでも
  なさそうです。こんどは最長老の和裁師さんにたずねてみました。すると・・・

  「わたしが手習いの時分(十代前半か?)かろうじて縫うたことがあります。
   長羽織も もうおわりのころでした・・・。」

  そ、それだぁっ! 当時の長羽織 思い出しながら 縫ってくださいっ!!

  前下がりの調子や 裾をすぼめる加減など 細かい留意点に気をつけてもらいながら ようやく
  仕立て上がり 試着すがたを眺めて 思わず うなってしまいました・・・。

  ・・・これは、 竹久 夢二 だぁ・・・・!

  帯の太鼓で つんっ と突き出した背の山から 裾に流れ落ちるラインは 
  ほっと 実った酸漿(ほおずき)のように可憐で たおやかで 女性らしい曲線は
  竹久 夢二の 描く 美人画に そっくりでした・・・。

  ちなみに その最長老の和裁師さんは いまだ現役です。手先のしごとをなさる方は頭も気持ち
  も いつまで たっても 若々しいですね。

  長羽織は 一時の復古ブームに終わらず すっかり定着定番化しました。
  ぼくも やっぱり だいすきですねぇ・・・長羽織・・・。
  かんたんな ちりよけ感覚でも かるく羽織れるし おびの前の柄も 見てもらえる。
  羽織ひものおしゃれも楽しめるし 羽裏に 凝ってもいいですねぇ。
  逆に羽織は 室内で無理に脱がなくいいんです。(コートは入室の際、脱がなきゃいけません。)
  だから お子さんの授業参観でも教室のうしろで 羽織姿で たたずんでもいいんです。
  
  なにより、なにより、うしろ姿は “夢二”美人・・・ですから・・・。 

  

   

関連記事