先日 ぼくが 所属している北九州呉服商組合青年部のメンバーで茨城県水戸市に視察にいきました。
型絵染め作家 荒川眞理子先生 の工房を見学するためです。
閑静な住宅街をぬけて小高い丘のうえのマンションが先生のご自宅です。
やわらかい日差しがふりかかる あたたかい雰囲気のリビングルームで お茶をいただいてると
先生が悪戯(いたずら)っぽく笑いました。
「 わたしの 仕事場は “ココ” なんですよ・・・。」
えええっ・・・と驚く一同。だって、ココはドラマの舞台にしてもいいような 感じのいい
ごくふつうのリビングですよ?
しかし よくよくみれば 趣味のよい食器棚のとなりに 草木染めの染料のビン・顔料・植物染材・
色挿しの筆・刷毛(ハケ)・絵皿・乳鉢・・などなど染色道具一式が ごく自然にすましたカオで
日常生活にとけこむように鎮座していました。
おとなりの和室に場をうつすと 先生は おもむろに 和箪笥(わだんす)の透き間から
すろっするっするっと長ァァ~い木製の板を ひっぱり出しました。
おおお・・・とのけぞる一同。反物を伸ばして貼り付け、糊置き・地染めをおこなう
《長板ながいた》です。
余分な染料や糊を洗い流す工程《水元みずもと》はお風呂場で大きな、たらいの中でおこなうそうです。 充分に水を通した反物は風通しのよい日にベランダで干し ゆっくり乾燥させるそうです。
大きな染め工房でしかできないと思い込んでいた一連の工程がマンションの一室で完了して
しまいました・・・。す・・凄い・・ぼくは感銘を受けてしまったのです・・・。
近代的・日常的な風景のなかで 伝統工芸の灯(ひ)が絶やされず 脈々と息づき、そして
産み出されてゆく・・・あたらしい時代と共存してゆく染織のすがたが ほのかに視えてきて
なんだか うれしくなりました。
荒川先生はとても気さくで明るく おはなしを聴いていて わくわくうきうき楽しくなるような
魅力的なかたです。和箪笥のなかの思い出のお着物もみせていただきました。ニコニコ顔の先生は
ホントにお着物が大スキなんですね。そんなヒトの作る作品がたのしくないわけありません。
イマジネーション喚発の遊びごころ満載の作品群です。
ふくひろのHPブログのフロントを飾っている 真っ黄色のそめおびは先生の作品です。
うこんで染めた真性のイエローに飛びかうスカイブルーの青い鳥・・・
先生のつけられた題は『とりをよぶ』・・・
・・あのあたたかいリビングルームで産まれた素晴らしい逸品です。